渾圓(こんげん)とは、宇宙の全ての物は繋がっていて一体である状態を表す言葉です。
中国語の発音は、hun yuan フンユエンで、渾元或いは、混元とも書きます。
宇宙には気が満ちていて、全ての物は気で出来ており、本質的には宇宙は一つの気の塊です。
道家や禅の思想はこの考え方が根本にあります。
その為、道家や禅の言う「智慧」は西洋や他の思想の考える知恵とは異なります。
西洋(ソクラテスの考え方など)や他の思想の考え方では、知恵は物事を分解して捉えることで得られると考えます。
例えば、人間が何かが熱いと認識するには熱くない物が存在しないとなりません。
全ての物が同じ温度だと熱いと認識出来ないからです。
この様にもともとある物を熱い熱くないの二つに分解する事によって知恵を得るのが一般的な考え方です。
なので“理解”という言葉も、“理”を分“解” する事によって物事を把握するという考え方から出来ています。
知恵をさらに増やすには、そこにある物をさらに分解し続けて知識を増やしていきます。
これに対して、道家や禅では物事を分解して理解すると言う事はもともとある完全な真実を分解して破壊してしまう事なので、知識を得れば得るほど真理から遠ざかる事になると考えます。
なので真の智慧を得るには、物事を分解して理解せず、余計な知識を減らし、宇宙をありのままに認識するべきだと考えます。
つまり、一般的な思想が知識を増やしていくのを推奨しているのに対し、道家や禅では余計な知識や思考を削ぎ落とす事を目指します。
そして真理を悟った時に宇宙は渾圓だと気付きます。
渾圓の思想は武術にも影響しています。
形意拳や意拳は渾圓力を養います。
一般的に渾圓力とは全身を一つにまとめて出す力と解釈されています。
全身が更に大気との接触を通して全宇宙と一体になった感覚が出るのが理想です。
文:ハワイの武術家 Jun Ming
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